コーヒー好きな人ならば、きっと誰もが一度は憧れたことがあるのではないでしょうか。

「おいしいコーヒーを飲んでみたい、自分で淹れてみたい。」

しかし、コーヒーを始めてみたいものの器具もないし、そもそも何をすればいいのかよくわからない……。そんな人に向けて、コーヒー初心者である当サイトのスタッフが自分でコーヒーを淹れられることを目指し、バリスタの星野元樹氏にコーヒーのあれこれを聞いてきました。

今回は連載1回目『コーヒーの効果』についてをお届けします。

星野元樹(ほしの げんき)氏<左>

2005年にコーヒーの世界へ。タリーズコーヒーにて店舗マネージャー、コーヒースクール講師を務めた後、新潟伊勢丹『ショコラモード』でバリスタとして店舗を運営。その後、鈴木コーヒーに入社して直営店事業統括マネージャーとなり、ぴあ万代、伊勢丹に直営店をオープンさせる。2018年に独立し、家業の稲作農業とコーヒー業の二刀流『ホシノテラス』をスタート。(もっと詳しく

皆川(みながわ)<右>

当サイト『U+RooLee(ゆるり)』のスタッフ。趣味はお酒と映画鑑賞のインドア派。これまでのコーヒー歴はインスタントのみ。結婚を機に家で過ごす時間が増えたこともあり、ちょっと本格的なコーヒーを始めてみたいと思う今日この頃。毎朝、食後に一杯のコーヒーを飲むのが日課。

皆川 コーヒーを始めてみたいのですが、まだ道具を持っていません。一式揃えるとなるとそれなりに予算もかかりそうで、そうなると妻から反対されないか心配です……。

それで思ったのが「コーヒーにはこんないい効果があるんだよ!」ということを言えたら、妻も納得した上で始められるんじゃないかと思いまして。そこで、まずはコーヒーの効果について教えていただけたらなと思っています。

星野元樹氏(以下、星野) こんなことが僕らの生活にとって役立つんだよ、という目線ですね。

コーヒーで仕事のパフォーマンス向上

星野 まずは主人の良きこととして、仕事がますますできるようになる。出世するかもしれませんよ。

皆川 え? 仕事ができるようになるんですか?

星野 もちろん、全ての人がというわけではないですが、忙しい一日の中で意図してコーヒーの時間を持つということは、時間の使い方にメリハリをつけるということになります。

仕事でもプライベートでもやらなきゃいけないことって、いっぱいありますよね。でも、人間の集中力って、そう長く続くものではないと言われていて。忙しい忙しいといって脳に休む時間を与えなければ、集中力も切れてダラダラやってしまいがちになります。なんですけど、コーヒーを飲みたいなと思って10時とか15時とかに淹れたければ、それまでに一区切りつけようと集中してがんばる。リラックスして回復する。メリハリがつきますよね。

皆川 なるほど。コーヒーが切り替えのスイッチになるんですね。

星野 あと、朝もいいですよね。朝起きて淹れるコーヒーがあると、それだけで脳に対しては活力になるので。「朝、時間がないから」といってバタバタ慌ただしく過ごす人も多いと思いますが、人間は起きてからの数時間が脳がよく働く時間と言われています。

朝にコーヒーを淹れるには時間に余裕がないとできませんから、いつも時間ギリギリという人はちょっと早起きしなきゃいけない。もし早起きすれば、時間にもちょっと余裕が生まれる。そしたら、コーヒーを飲む時間だけでも考える時間ができますよね。

皆川 仕事ができる人は早起きみたいな話は、本で読んだことがあります。あと、勉強や仕事のときにコーヒーを飲むと集中力が上がるという話も聞いたことがあるのですが、コーヒーにはそういう効果があるのでしょうか?

星野 これは研究結果が出ている話なんですけど、計算能力のテストで学生をふたつのグループに分け、片方にはカフェイン入り、もう片方にはカフェインレスのコーヒーを飲ませ、学生たちに解いてもらったところ、前者のほうが得点が高くなったという実験があります。(※1)

あと、山の標高を覚えてもらうといった記憶力テストもされていて、カフェイン入りとカフェインレスを比較した場合、カフェインを取ったグループの方が正解率が高かったという実験もあります。(※2)

こうした話はかなりいろんなところに出ていて。これらの事実から言えることは何かというと、「パフォーマンスの向上」と「短期間の記憶力の増強」の効果があると。

※1 東京大学大学院医学系研究科 飯野正光教授らによる実験
※2 京都大学大学院薬学研究科 金子周司教授らによる実験
参考:全日本コーヒー協会

皆川 実験の上、コーヒーにはパフォーマンス向上と記憶力増強の効果があることがわかったんですね。

星野 ちなみに、カフェインが体に作用するまでは摂取してから約15分かかると言われているので、これから勉強するときなんかは15分前に飲んでやるといいんじゃないかなと。もちろん、個人差や条件によって違いはありますけど。

さっきのパフォーマンスが上がる話と紐付けていうと、最近よく「パワーナップ」っていう言葉を聞きませんか? パワーナップっていうのは短い仮眠のことなんですが、たとえば机で15分だけ休むと、その後の午後のパフォーマンスが上がるとか。とはいえ、「15分寝てすっきり起きられるか?」というと、なかなかそうもいかないので。パワーナップの寝覚めをよくするためにコーヒーを飲むというやり方があります。

コーヒーの香りだけでもリラクゼーション効果

皆川 仕事や勉強のパフォーマンスが上がるなんて嬉しい話ですね。ここまで主人の良きことを教えていただきましたが、コーヒーのある生活をする上で家庭での良きことはどうでしょうか?

星野 ご家庭の良きこととしては、まず奥さんが仮にコーヒーをあんまり飲まなかったとしても、コーヒーって香りがすごくいいので。香りを愉しんでリラックスしてもらうことができますね。

面白いのがコーヒーには産地がいろいろあるんですけど、産地によって香りも違っていて。「……ということは、一番リラクゼーション効果が高い豆はどれか?」と研究された方がいるんです。そしたらグアテマラとブルーマウンテンがα波の出現量が多く、リラックス効果が高いという結果になったそうです。豆によって違いが出るのは面白いなぁと思いましたよ。(※3)

だから、コーヒーを取り入れると奥さんにも「一緒にリラックスできるよ、飲まなくても効くんだって」って言えますね。これよくないですか? 飲めとは言わない、香りがよくなる。

※3 杏林大学医学部精神神経科 古賀良彦教授らによる研究。ブラジルサントス、グアテマラ、ブルーマウンテン、モカマタリ、マンデリン、ハワイコナの6種類の豆を比較しての結果。
参考:全日本コーヒー協会

皆川 たしかに! 飲むだけじゃなく、香りだけでも愉しめるというのはいい切り口になりそうです。

淹れた後のコーヒーかすが家事でも使える

皆川 その他にも生活に役立つような効果はありますか? たとえば脱臭に使えるみたいな話を聞いたことがあるのですが。

星野 挽いたコーヒーって消臭・脱臭効果が高いんですよ。備長炭と同じくらいと言われていて。備長炭はよくトイレに置いたりするんですけど、トイレの臭い取りに使ってもいいですし、下駄箱にいれて靴の脱臭をしたりとかにも使えます。

皆川 それはコーヒーを淹れる前の粉ですか?

星野 コーヒーを淹れた後の「コーヒーかす」で大丈夫なんです。ただ、しばらく置きっぱなしで使いたい場合は乾燥させないとカビちゃうので、乾燥させてあげて小皿や袋に入れて脱臭剤にしてあげます。

あとは家庭菜園やガーデニングをやっている人にもよくて、コーヒーかすが肥料としていい影響を及ぼすんですよ。

他にも、洗剤代わりとして使うこともできて。コーヒーかすが油を吸収するので脱脂綿や布に包んであげて、油料理のお皿を磨いたりするときれいになるとか。シンクのぬめりも取れたりとか。

皆川 飲むだけじゃなく家事にも使えるなんて、これは妻も喜びそうな情報です。

コーヒーをきっかけに出会いが生まれる

皆川 その他に、コーヒーをやってよかったと思うことはあったりしますか?

星野 コーヒーがいろんな出会いを生んでくれているのは間違いなくて。僕、社内社外のお付き合いでもなく、プロ・アマ関係なく、コーヒーを介して知り合った友だちがいっぱいいるんですよ。

僕らこれからどんどん歳を重ねていきますけど、おそらく、その人たちと老後も一緒に愉しめるのかなと思っていて。コーヒーをやっていて一生涯の友だちがいっぱいできている気がします。

皆川 コーヒーを介して、人との出会いや交流が生まれていると。

星野 最近、孤独死が増えているといった社会問題がありますが、男性と女性だと男性のほうが多いそうです。やっぱり企業戦士でずっとやってくると社内のお付き合いしかなくて、奥さんが学校とか保育園とか地域のコミュニケーションを全部一手に引き受けているケースが多いらしいんですよ。そうすると仕事をリタイアメントしたタイミングで、友だちゼロって状況が普通に有り得てしまうようで。そういう意味では、友達作りのきっかけにもいいんじゃないかなと思いますね。

皆川 これからコーヒーを始める人は、どこでそうした出会いや交流の機会があるのでしょうか?

星野 コーヒーを始めれば、豆を買うことがあると思います。豆は豆屋さんだけでなくて、それこそカフェでも売っていたりします。おそらく、コーヒーを始めたらそうした場所に足を運ぶ機会も増えると思います。

僕がお店に立っていてよく感じることは、全然属性が違う人がカフェで会って友だちになってるケースっていっぱい見るんですよ。共通点は「コーヒーを好きなこと」なんですよね。

たとえば、医療関係のお仕事をしている女性の方と清掃業をしている男性の方が、カウンターでたまたま話していて、次第に顔なじみになっていくわけですよ。そうすると「あ、こんにちはー」という感じで仲良くなっていって、気付いたらなんか一緒にコーヒー飲みに来てますね、っていう光景が僕としては見たりしますね。

皆川 知り合う人の年齢層も広そうですね。

星野 幅広いですね。若い人よりも30代~70代、80代くらいですかね。年上の方とお友達になるケースってすごく大事じゃないですか? 僕、すごいそれは有り難いなと思っていて。世代を問わず新しい出会いができたりするので。僕の経験を通してですが、コーヒーをやることによっていろいろな出会いが増えるかもしれません、って気はしますね。

コーヒーが家族とのコミュニケーションの時間を作る

皆川 コーヒーが新しいコミュニケーションを作り出してくれる一方で、家族とはどうでしょうか?

星野 それこそ、家族をつないでくれているものでもありますね。たとえば、自分はブラックで飲みますけど彼女はカフェオレが好きなので、コーヒーを濃いめに淹れて。彼女はカフェオレ、僕はブラック。彼女のはミルク割り、僕のはお湯割り。

それを飲みながら子どもたちどうだろうと話したりとか、今度どこどこに遊び行こうかとか、こういうお店できたんだって今度ランチ行ってみようかとか。コーヒーを淹れる毎日の日課の中で、こうしたやり取りが生まれています。

皆川 コーヒーの時間が、家族とのコミュニケーションの時間を作ってくれるわけですね。

星野 コーヒー飲む時間って大事ですよね。得てして、僕らは日々に忙殺されてしまいがちだと思うんですけど、ゆっくりコーヒーを飲みつつ、これからのことをちょっと一緒に話す機会を日々の中に持てるじゃないですか。「今日、家族会議だから」なんて気張った感じじゃなく、ごく自然に。

皆川 会話の時間が持てれば、自然とお互いの近況や先々の話もしますもんね。振り返ってみると、我が家ではちゃんと会話する時間ってあんまり取れていないような気がします。

星野 もしお子さんができたら、お子さんが一番に来ちゃうからもっと少なくなると思います。だから、今のうちからコミュニケーションする時間として持っておいたほうがいいかもしれませんね。それは彼女はお茶でもいいかもしれないし、もし彼女がコーヒーが好きなら、自分が淹れてあげたら彼女も喜びますよね。

たとえば、チョコが好きなら「チョコあるよ、コーヒーも一口飲まない?」って、コーヒーをそっと出してあげることもできる。「これグアテマラが入っていて、そのチョコとこのコーヒーすごく相性がいいんだよ」とか、より美味しく用意してあげられる。

皆川 妻がチョコ好きなのでそんなことができたら、かっこいいだろうなぁって憧れます。あと、お客さんが来たときにも、自分でも出せるようになりますよね。奥さんに任せきりではなく。

星野 奥さんだって鼻高々ですよ。お友だちが来たときに自慢してくれるかもしれませんね。まるでカフェのようって言われますよ。新居にお客さんが来ます、コーヒーの香りを充満させて、そうなったら奥さんも嬉しいと思いますよ。

皆川 自分がやってみたいから始めてみたいと思ったコーヒーですが、家族にもいい効果があるとなると、なおさら早く始めたくなってきました!

コーヒーの効果のまとめ

コーヒーを生活に取り入れることによって、次のような効果が期待できるという話を教えていただきました。

  • 仕事のパフォーマンスが上がる
  • 飲まなくても香りだけでリラックスできる
  • 消臭、肥料、掃除など家事で役立つ
  • 人との出会いや交流を生んでくれる
  • 家族とのコミュニケーションの時間を作ってくれる

次回は、まだ器具を何も持っていない人はまず何から揃えたらいいのか、この疑問を解消するため、『コーヒーの器具』についてをお届けします。